光の最先端技術をもっと身近に、もっと世界へ。
情報工学の研究室で光の世界とデバイスセンターなどの面白さに触れ、光先端マテリアル技術を核としたハードウエア製品の開発職へと進んだ小川隆史さん。最先端技術をカタチのある製品にして世の中に広げ、社会課題の解決に貢献したいと考えている小川さんを開発現場に訪ね、ソフトウエア技術を活かした開発業務の現況や仕事を取り巻く環境、入社4年目の若手技術者としてのキャリア展望について訊いた。
小川 隆史〈おがわ・たかふみ〉
スマートデバイス&マテリアル事業部
光デバイス&マテリアルユニット 主任
研究室での出会いから、製品開発の道へ。ソフトウエアと組み合わせることで、光技術の可能性はどこまで広がるのか。
私は情報工学専攻なので、大学の授業では主にプログラミングやネットワーク、アルゴリズムといったいわゆるソフトウエアを勉強していました。一方で、所属していた研究室で眼底検査装置のシステム改良に取り組む機会があり、その時に初めて目の検査に使うための光源のひとつとしてレザーやざっくりとですが光といったものに触れました。光との出会いは偶然といえば偶然でしたが、それによって大学院でも光を使った電磁波の計測用装置の研究をすることになり、「ソフトウエアだけではなくてハードウエアのことも分かっていた方がいいよね」というレベルから徐々に光技術を応用したハードウエア開発そのものに興味を持つようになりました。もちろん、進路については光ではなくてセキュリティだとかネットワークといった分野を選択することもできたのでしょうが、最先端の光技術をソフトウエアと組み合わせたらどのような製品を開発することができるのか、その可能性を追求してみたいという気持ちが強くてNTTアドバンステクノロジへ入社しました。当社についてはSIerとかソフトウエアの会社といった印象を持たれる方が多いのではないかと思うのですが、グループ内ではNTT研究所から生まれた先端技術を世の中へ広げていくというミッションを担っていることもあり、すでに最先端マテリアル技術を核としたデバイス事業では数多くの実績があります。
光をキーワードに、商材開発と研究支援を担当。プログラミングに打ち込んできた大学時代の自分を褒めてあげたい。
担当している業務は大きく分けて自社商材の開発業務とNTTグループ各社に対する研究支援業務の2つです。開発業務では主に、光制御技術のひとつであるDOEと呼ばれる回折光学素子の設計を担当しています。波長やビーム形状といったお客様が希望する仕様に合わせてソフトウエア上でシミュレーションを繰り返しながら、シリコンや石英といった基盤を微細加工するための格子状のパターンを設計し、実際に微細加工した素子にレーザーを当てて測定を行うといった評価作業までをチームのメンバーと一緒に行っています。シミュレーションや評価測定に使用するソフトウエアは市販ツールを部分的に利用するだけで、ほとんどの作業を自社開発ツールで行うため、パラメーター設定やソフトウエア管理などは重要な業務のひとつです。そのため大学時代に取り組んだ勉強が非常に役立っており、真面目にプログラミングに打ち込んできた大学時代の自分に感謝しています。
またグループ会社への研究支援業務では、主に光に関わる実験やデバイスの設計などに携わっています。例えばレーザーを使った実験をしたいと考えている企業に対して、目的に合った機材の選定や配置、手順から評価手法といった構成案を企画提案し、時には実験に立ち会ってサポートまでおこないます。
技術者として仕事に集中できる企業風土。一つひとつの達成感の積み重ねが、仕事のモチベーションに直結していく。
アドバンステクノロジは研究所との繋がりが深いことから、社内の雰囲気はアカデミックというか、技術的な議論では上下の関係なくフラットな立場で自分の意見を言うことができる、オープンな企業風土が根付いています。チーム内には私以外にも昨年入社したメンバーなど、若手の技術者も所属していますが、年齢や役職の違いを意識することなく、それぞれが一人の技術者とし仕事に集中できる環境にあります。もちろん、私は先輩技術者である皆さんと比較すれば光学素子の設計業務を始めてまだ日が浅く、特に光について専攻する学問として物理や光学を学んできたわけではないので基礎的なことも含めてまだまだ知識不足を痛感しています。そのため、チームメンバーや先輩技術者に教えを乞う、ネットで調べる、本を読む、社外研修を利用するというようにあらゆる機会を利用して自分自身でも勉強を続けています。
どんな仕事でもそうですが、初めてのことや知らないことが多いとまず理解するのに時間がかかり、その上で業務を遂行していくことは大変なことだと思います。しかし、最初は理解できなかったことを納得できるまで自分で勉強し、そして設計に反映して狙い通りの結果を出せた時には、大きな達成感を得ることができます。また、そういった達成感を一つひとつ積み重ねていくことでこなせる業務の幅が着実に広がっていくので、高いモチベーションをもって仕事に取り組むことができます。
望むのは、幅広い業務経験を経たキャリア形成。ニッチなものから業界標準まで、多様な製品開発で社会に貢献したい。
製品開発プロセスには、製品設計以外にも企画やマーケティング、生産管理、事業推進といったさまざまな業務があります。そのため今の時点ではひとつの専門領域を深堀りしていくというよりも、光を軸としていろいろなことを幅広く経験しながら、技術者としてのキャリアを形成していければと考えています。そういった理由から、まずは目の前の業務を通して必要な知識と経験を積み重ねて、物事を自由に発想できるような一人前の技術者になることが現在の目標です。そのため社外の方とも積極的に交流し、外の世界からも刺激を受ける機会を増やすようにしています。さまざまな業界や企業の方からお話を伺っていると、「そんなニーズがあるのか」「そういった制約もあるのか」といった新たな気付きが常にあります。今年の1月にアメリカで行われた展示会に自社の説明員として参加した時も、我々の技術を想像以上に評価してくださる大きな市場の存在を実感できましたし、このような経験は間違いなく将来の私にとって大きなプラスになっていくと感じています。
NTTアドバンステクノロジでは常に最先端の研究テーマや技術情報に触れることができるため、新しいモノに興味がある、カタチにしてみたいと考えている人間にとっては理想的な環境が整っています。私も早く一人前の技術者になって、ニッチなものから業界標準となるような汎用製品まで、多くのデバイスを開発することで社会に貢献していきたいです。
一般的にビーム形状の変換に使われる透過型の回折格子(DOE)では、光吸収がわずかでも、高出力レーザへの適用では、発熱の影響によりその性能を維持することができず、使用範囲が限定されています。
NTT-ATの反射型のビームシェイパは冷却ユニットを使用して素子を直接冷却できるため、10kW超級のハイパワーレーザでも性能を発揮できます。
取材協力
NTTアドバンステクノロジ株式会社
https://www.ntt-at.co.jp/recruit/